データ活用からコミュニティ、クラウドファンディングまで。

webサービスのteketだから
目指せる未来がある

ConcertSquare 安西 剛 | 株式会社NTTドコモ 島村 奨

「teket」の企画・開発担当者である島村さんが、待望のサービスリリース後、真っ先に連携を申し入れたのは「ConcertSquare」でした。

ライブやコンサートなどのチケット販売およびその管理業務を効率的にする「teket」。音楽を通じてたくさんの人々とつながる場所として、音楽をもっと身近に・日常的に多くの人々に楽しんでもらうための場所として生まれた「ConcertSquare」。

2019年にリリースされた最新のWebサービスと、1999年に開設されたクラシック音楽情報サイトの老舗とを結びつけた共通の「想い」と「今後の展望」とは、一体どのようなものだったのでしょうか。代表者のお二人に、じっくりとお話を伺いました。

人物紹介

人物紹介

安西 剛

学生時代に吹奏楽部で打楽器を始め、社会人では主にアマチュアオーケストラで活動。大学時代からクラシック演奏会情報サイトConcertSquareを運営。本業はITエンジニア、エンジニアリングマネージャー。

人物紹介

島村 奨

1990年東京出身。株式会社NTTドコモ所属。
NTTドコモの39worksプログラムを利用し、駐車場サービス「Smart Parking Peasy」の立ち上げに参画。最前線でプロダクト開発を担い、 2017年度グッドデザイン賞ベスト100およびグッドデザイン特別賞 [未来づくり] 受賞。
4歳からバイオリンを始め、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラなどの複数のアマチュアオーケストラに所属する中で、その運営に課題を感じ、運営支援のサービス化を行う。

インタビュー画像 その1

「teket」と「ConcertSquare」の連携は、どういう経緯から始まったのでしょうか?

もともと僕自身がユーザーとしてConcertSquareを利用していたため、一方的によく知っていたんです(笑)。

アマチュアオーケストラのコンサート情報を掲載する老舗サイトであり、利用ユーザーは現在のteketのターゲット層そのもの。だからサービスを訴求していく上で絶対に連携したい相手と考え、真っ先にお話をさせていただきました。

現在はサイト登録者の方へのサービス案内メールやバナーの掲出など、すぐに取り組み可能な範囲からの連携を開始していますが、安西さんとはよく「これから一緒に業界を盛り上げていこう!」という話で盛り上がっています。

老舗サイトであるConcertSquareが、新興サービスであるteketと連携したいと思った理由は何だったのでしょうか

teketのサービス内容に共感したからというのは勿論ですが、それ以上に島村さんと業界に対しての「課題感」が一致しているな、と感じたことが大きかったですね。

アマチュアオーケストラの運営は、楽しいことも多いのですが、めんどうなことも多いんです。でも僕は、聴くよりも演奏するほうが何倍も楽しいと思っているタイプの人間です。だから全員が楽しく演奏活動を継続していくためには、やはりteketのようなwebサービスが活用されることで、もっと運営業務が簡略化・効率化されていくべきだと前から考えていたんです。

しかもteketは、個人の趣味の延長にあるようなものではなく、しっかり大手企業の「新規事業」として取り組まれているwebサービス。これは業界全体でみても、純粋に凄いことなんですよ。実は僕も以前、似たようなシステムの開発を検討したことはありました。でもチケット売買を管理するプロセスは非常に複雑で、趣味でやるにはリソース的に難しかったんです。

だからこそteketの誕生をきっかけに、こういう動きが業界全体でもっと広げられないか、そのために一緒にできることはないかと思い、連携をスタートさせていただいたんです。何より、自分自身この取り組みを非常に面白そうだと感じましたからね。そこは本当に、こちらとしても「ありがとう!」という気持ちでした。

インタビュー画像 その2

リソースに関するお話が出ましたが、ConcertSquareは現在どういう運用・運営体制となっているのでしょうか。

僕が大学2年生だった1999年の開設時から今日まで、ずーっと一人でやってます(笑)。web版の「ぴあ」もなく、ADSLですらない時代、プログラミングの勉強を兼ねてのサイト立ち上げでした。

継続できた理由はとしては、エンジニアあるあるかもしれませんが、サイトを「収益の場」ではなく「個人の技術的な実験場」と捉えていたからですね。お客さんを抱える会社のサービスでは絶対できないような技術的なトライを、5年に1度ぐらいの周期で試み続けています。そこのモチベーションこそが、今日まで続けてこられた最大の要因でしょうね。

集客に関しては、昔から特に何もしていません(笑)。老舗効果というか先行者利益というか、オーガニックで徐々に増え続けてくれました。競合サイトもあるにはあるのですが、趣味でやっているサイトも多く、商用は限られてますからね。

むしろ最近になってようやく、ConcertSquareにもう少し本腰を入れて取り組んでみようかな、と考え始めたんですよ。何か機能を追加するとか、誰かに少し手伝ってもらうとか、若干の投資はしてみようかなと。開設から20年を超えて、ようやくですが(笑)。

インタビュー画像 その3

オーケストラというジャンル自体の認知度は高くプレイヤーも多いのに、どうして商用のサイトの数は限られてしまうのでしょうか。

オーケストラ関連の商用サイトがシンプルに、儲からないからです(笑)。理由の1つとして、プロのオーケストラ団体の数が非常に少ないことが挙げられます。オーケストラは、出演者の数が多く、集客が1000人でも、出演者が100人なら一人あたりの配分は10人程度になりますよね。だからコンサート収入だけでやっていくことは非常に難しく、それゆえプロの数が非常に少ない。日本全体でみても30〜40団体ぐらいでしょうか。団体運営のための費用は、助成金が大きな割合を占めているというのが現状なんです。

稼ぐ方法も無いわけでは無いんです。例えば映画音楽の演奏会は満員になることも多いようです。ディズニーやゲーム系を中心に演奏する団体も増えてきました。ああいう儲かる「フォーマット」を作っていくことは、団体運営を収入の面から支えていく上でとても大きいと思います。

むしろ課題なのは、「音大を卒業した個人」です。卒業生は毎年増え続けますが、多くの人はプロのオーケストラには入れませんし、ソロで活動をしていくのもハードルは高い。結果として、せっかく音大を卒業しても、アルバイトをしたり音楽と無関係の仕事に就職する人の方が多くなってしまう。それは非常にもったいないことですし、僕としてはそういう人たちのために、もっと何かをしていきたいのです。

なるほど。業界構造的な問題もかなり大きそうですが、teketで何かサポートできそうなことはありますか

音楽業界はCDが売れなくなって以降はライブ中心へとシフトしていますが、その本数が増えれば増えるほど、今度は集客に苦戦するようになりました。クラシックも同様です。生オケやプロ級にうまいアマもたくさん増え、いろいろな境目がどんどん曖昧になっていく一方、「集客できる人・できない人」の差がさらに広がっています。

現在集客ができている人についても、マーケティングなどに基づいた成果ではないため、ノウハウとしての再現性がありません。基本は手売りで地道にやりながら、運よくいい人に見つけてもらい、拡散してもらえたら集客が増えるという偶然に頼った流れ自体に、昔から大きな変化はないのです。

だからこそ、集客のきっかけづくりをteketでサポートしてあげられるようになれば、演奏者自身の集客力アップにもつながっていくのではないか、と考えています。

インタビュー画像 その4

現状の大きな課題は、やはり集客にあると

間違いなくそうですね。利用者からも「teketの宣伝で、もっと集客できるようになりませんか」と聞かれることはよくあります。でも、既にぴあなどでチケットが販売されているような団体であれば、購買可能性の高い層への訴求はある程度完了しているわけです。

それで売れないのであれば、露出以外の自分たち側の原因を考えるべきでしょう。知名度なのかアピールの仕方なのか、何が課題なのかをしっかりと認識し、自分たちで売っていく力をきちんと身に付けていかない限り、これからますます辛くなる一方でしょうね。

だからteketとして今後取り組んでいきたいのは、「そこに課題感を持っている成功者は、どういうことをやっているのか」をきちんと分析し、それができていない人たちにフィードバックできる仕組みを作ることですね。

集客力の向上のための取り組みで、実際に上手くいっている事例はあるのでしょうか

YouTubeなどをうまく利用して、見せ方を工夫したことで売れた人たちはいますね。今はインターネットやSNSがあるので、そこを話題の起点としてテレビに取り上げられるような展開も含め、以前よりも個人で売れるチャンスは確実に広がっています。そこのプロデュース的な部分を、自分としてももっとサポートをしてあげられたらと思っています。

例えば僕が所属する団は指揮者もアマチュアなんですが、彼個人にけっこうファンがついているんですね。YouTubeやTwitterなど10年近くいろいろな取り組みを続けたおかげで、公演後には多くの感想ツイートが寄せられます。プロで考えると時間がかかりすぎという問題は当然あるのですが、SNSを活用してファンを増やしていく手法は、今後ますます有効になると思いますよ。

あとは地域ですね。僕も以前、地域名がそのまま団体名に入るような伝統ある団に所属していたのですが、そういう団には年配のファンがしっかりついているんですよ。「65歳以上半額」のキャンペーンをやると、けっこう来てくれるんです。そういうコミュニティの作り方・広げ方も面白いなと。

大学のオーケストラも同様かもしれません。OB・OGとか、ずっとファンのおばあちゃんとか、固定客が多い。団員も200人ぐらいいるので、団員のつながりだけで1000枚、それ以外の固定客でさらにもう1000枚とかチケットが売れるんです。団員の数も、昔と比べればかなり増えましたしね。

余談かもしれませんが、僕は今後の音楽の楽しみ方として、「自分で演奏する」が増えていくのではと思っています。サブスクが増え、ライブが増え、次は自分で演奏をやってみよう、という流れですね。高齢化社会や働き方改革などで時間に余裕のある人が増えた結果、文化はどんどん「体験」の方向に進んでいくのではないでしょうか。

僕自身「聞く」より「演奏する」ほうが断然楽しい派でもあるので、演奏人口が増えていくことに貢献したいという想いが強くなっています。そこに業界としての新しいチャンスもあるのではないかと考えています。

インタビュー画像 その5

演奏人口の増加支援という点では、大学卒業後に活動を止めていた人たちが戻ってくるようなイメージでしょうか

うーん。現在の傾向から考えると、社会人になってからの中断はともかく、大学卒業のタイミングで活動を止めた人の復活はちょっと難しいかもしれません。学生時代に頑張りすぎ、燃え尽き症候群に近い状態で止めた人も多いですからね……。

むしろ就職や転勤などで移住してしまったため、どういう風に活動を続ければいいかわからなくなった人への支援が必要になると思っています。

そういう人が大勢いる反面、団員が足りないというオーケストラも実はたくさんあるんです。先ほど演奏人口が増えたという話をしましたが、バイオリンなどは毎回20人弱が必要になってくるパートなので、常に人数が足りません(笑)。だから「団員が欲しいオーケストラ」と「演奏を続けたいけど行き先がない人」をマッチングさせる仕組みは、演奏人口の増加を促していく上でも不可欠だと思っています。

現状のConcertSquareにも募集機能はありますが、使用目的がだいぶ異なってしまいますからね。そこを拡張させて活用するか、切り離して別サービスを立ち上げてしまうかは、今後検討していきたい部分です。オーケストラに限らず、例えば吹奏楽やジャズ、あるいは琴など、似たような課題感を持った業界も多いはずで、そういうところとも上手く連携ができるといいのではと思っています。

先ほどから「連携」が1つのキーワードになっている印象ですが、オーケストラ業界には各団体同士、いわゆる「横のつながり」はないのでしょうか

団体同士のきちんとしたつながりは、残念ながら無いと思っています。あるのは、団員間同士による、うっすらとしたアメーバ的なつながりぐらいでしょうか。例えばある団体のあるパートが足りないからとヘルプで入ってあげた場合、今度自分の団体で人手が足りない際には優先的に手伝ってもらう、みたいな。

いわば管楽器の人たちの演奏機会創出のために団体は生まれる訳で、運営の母体も当然管楽器の人たちが中心になります。それゆえ横のつながりは生まれるはずもなく、団体同士の断絶の発生はむしろ自然なことだったんです。

いわゆる「コミュニティ」的な存在はなかったわけですね。

はい。だからこそ「teketで運営者のコミュニティを作ろう」という動きを、先日ちょうど開始したところだったんです。

特に今回のコロナや以前の3.11のような非常時下においては、運営の在り方やノウハウ、過去の事例を知りたいというニーズが発生します。加えて、例えば自宅からのライブ配信のやり方はどうすればいいかなどの質問の投げ先、お互いの活動状況の共有先などの「ゆるいつながり」を運営同士のコミュニティとして持っておくことの価値は、相当高まっているはずですからね。

今はコロナの騒動が大きくなり過ぎてしまったため、まだ具体的な成果はあげられていないのが残念ですが、検討している試みはたくさんあります。いつまでこの状況が続くかは不透明ですが、今はとにかく早期の収束を願いつつ、いずれ取り組みを再開していきたいですね。

インタビュー画像 その6

コミュニティ自体は今ちょっとしたブームとなっており、管理者である「コミュニティマネージャー」は、専門職種として企業の求人にも出てくるようになりました。リアルな場を運営する人材のスキルやノウハウは、社会的にも評価されやすくなってきた印象です。

その価値やニーズは今後さらに高まっていくでしょうね。そして運営を担当する人材には、「いかに上手に回すか」はもちろん「いかに持続的にできるか」も求められていくことになるでしょう。力を抜くべきところは抜きながら、長く続けるための仕組み作りが重要となるのは、どんな団体でも同じだと思います。

そのためには、新しい収益構造の確立も大事になりますよね。最近ではクラウドファンディングが流行していますが、ああいうモデルについてはどのようにお考えでしょうか。

最近teketの運営メンバーの中でも、その話がよく出てくるんですよ。オーケストラと観客の関係性って、実はクラウドファンディングの主催者と応援者の関係性に近いのではないかと。だから「この団体を応援したい!」という観客側の気持ちを、ちゃんとクラウドファンディングのように形にしてあげることができれば、コミュニティは活性化し、オーケストラ業界全体も盛り上がっていくのではないでしょうか。

あわせて、演奏会自体がもっと観客に対し「体験として高い価値」を提供できるはず、と考えています。だってポップス系のライブパフォーマンスやシステムは年々進化しているのに、クラシック系は良くも悪くもずっと変わってないじゃないですか(笑)。

演奏形式も運営も、なんというか型が決まりすぎている部分がありますよね。観客側も「オーケストラはこう聴くべきだ」というものに囚われすぎている感はありますが、やはりもっと「体験」を意識した設計にシフトさせるべきでしょう。

例えばこの前ニコ生でやっていた「東京交響楽団の無観客ライブ中継」なんかはその典型例です。トータルで10万人が視聴し、新しいファン層が確実に開拓されましたからね。

うんちくや解説を経験者たちがコメントして、それをクラシックを知らない初心者たちが読みながら演奏を聴く、という体験設計は新鮮で面白かったですね。

実は普通に演奏会に行くよりも、ニコ生の形式で見たほうが初心者は楽しみ方がわかるのでいいなとすら思いました(笑)。

そういう意味では、今こそいろいろな仕掛けを試みるチャンスなのかもしれません。だって世界一のオーケストラだって、リアルで10万人動員なんかは絶対できないわけじゃないですか。今のコロナの状況を逆手にとってというか、ライブ配信がもっと当たり前になってくれば、全く新しい収益モデルも生まれてくるのではないでしょうか。

インタビュー画像 その7

なるほど。まさに業界全体が現在過渡期にあり、その中でもwebが担う役割がますます重要になっていくわけですね。それでは最後に、今後の各々の展望についてお聞かせいただけないでしょうか。

目の前の話でいえば、teketはチケットの手売りに伴う課題の解消に、まずはフォーカスしています。手売りを簡単にするのはもちろん、買ってくれたお客さんはどういう人なのか、実際に誰が来てくれたのかなどのデータ管理部分も含め、そこはある程度早期に実現できると考えています。

その上で「どうお客さんを呼んでくるか」という大きな課題について、teketでもっとサポートできるところはないかを検討し、システムに落とし込んでいきたいですね。第一歩として、まずはコミュニティをつくって情報がシェアされていくという流れを実現させ、その中で「ここはシステム化しよう」みたいな話ができていくといいなと思っているんです。

集客力を演奏家自身につけさせる部分と、運営側が疲弊しないようなフローのオート化の部分を同時に進めていく中で、teketというシステムが上手く役割を担えるようにしていきたいですね。

teketは事業として成立させる必要があるので、集客を強く意識していく必要があると思います。一方でConcertSquareはむしろ横に広げていくことを意識したい。究極的には「プロアマ問わず、日本のクラシックコンサート情報が全部掲載されているサイトになる」とか、何らかの形でクラシック音楽業界全体に貢献できるような形を目指したいですね。

では、その実現のためには何をどうすればいいのか。それを今後しっかりと検討していきたいですね。例えば、近い性質を持った団体のファンをネットで情報として集約し、その中で人気がある団体はどういうところなのか、どういう傾向があるのかを浮かび上らせるとか。そういうことの積み上げによって、いろんな課題と解決の手段を横に広げていくことができると思っています。もちろん団体だけでなく、音大を卒業した個人なども含め、全体で統合する方向に持っていけるといいなと。

teketともぜひデータ連携などしていきたいですし、そうすることで相乗効果も生まれていくと思います。あと、今のところ僕は聴く人より演奏する人向けにサービスを作りたいので、演奏する人がどうやれば集まるようになるかについて、もっと突き詰めていきたいですね。

業界全体の未来に対するお二人の気持ちが、よく伝わってきました。今日は本当にありがとうございました!

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