teket開発者の声 チケットの「手売り文化」の
弊害を、teketでなくしたい
株式会社teket 島村 奨

2024年6月1日更新

世の中にはさまざまなサービスが存在しますが、その価値は規模の大小ではなく、どれだけ対象者の課題(イシュー)を解決できたかで決まるのではないでしょうか。

ホン株式会社(※1)が、株式会社NTTドコモの新規事業創出プログラム「39works(※2)」を利用してNTTドコモと開始した「teket」も、世の中全体から見れば小さいかもしれない声に対し、大きな価値を提供することが期待されるサービスの1つです。

音楽ライブや演劇などのチケット電子化、座席の管理、来場者分析などが可能となる「teket」は、既存のチケット販売サービスと何が違うのか、利用者のどのような課題を解決していくのか。 「まずはアマチュアのアーティストや団体を中心に、チケットの手売り・手渡しや管理に割かれてしまう手間と時間と大幅に削減していきたい」と語る企画・開発担当者の島村さんにお話を伺いました。

(※1)現在は、株式会社teketに運営主体を変更しています。
(※2)現在は、「docomo STARTUP」

人物紹介

人物紹介

1990年東京出身。株式会社teket 代表取締役社長。
NTTドコモ(※3)の39worksプログラム(※4)を利用し、駐車場サービス「Smart Parking Peasy」の立ち上げに参画。最前線でプロダクト開発を担い、 2017年度グッドデザイン賞ベスト100およびグッドデザイン特別賞[未来づくり] 受賞。
4歳からバイオリンを始め、慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラなどの複数のアマチュアオーケストラに所属する中で、その運営に課題を感じ、運営支援のサービス化を行う。

(※3)記事掲載時は、NTTドコモ所属
(※4)現在は、「docomo STARTUP」

teketは自分自身が待ち望んでいたサービス

インタビュー画像 その1

今回島村さんがteketを企画・開発した背景を教えてください。

私はプライベートで10近くのアマチュアオーケストラ団体に所属しており、年間20〜30公演を行なっているのですが、どの団体・公演においても共通している課題が1つあります。それは「チケットの手売り・手渡し」に伴う時間と労力、つまりチケットに関する管理コストの問題です。

私の所属している団体の場合だいたい1公演あたり約1,000名のお客様にご来場いただくのですが、その実に約9割は団体からの手渡しや取り置きによる紙のチケットを利用してのものであり、web上のチケットサービスを利用しての一般来場者は1割程度となっています。そしてこの全体の9割を占める紙のチケットの管理コストのせいで、その団体でもチケット係になった人は練習もままならないほど多忙になってしまっているというのが現状です。

まずはこの大きな大きな課題から解消したかったというのが、teketを企画・開発した直接の背景になります。

知り合いによる直接の購入比率の高さはアマチュア団体の運営上、避けがたい構造かと思われますが、それがどうして深刻な課題につながってしまうのでしょうか。

例えば私が所属している団体の多くは団員が100名という規模感なんですが、その100名は各々でチケットを手売り・手渡ししているわけです。 そうなると販売状況を管理する取りまとめ役側、つまりチケット係の作業は、とにかく膨大なものになるんですよ。 だって100名から個別にチケット販売・取り置きについての連絡が入り、それを手作業で管理していくわけですから。 しかも多くの団体では、その係の人は1名だけだったりするのです。

昔はメール、今ならGoogleのスプレットシートなどで管理することでデータの記録だけは楽になった部分もありますが、結局は紙のチケットならちゃんと封筒に入れて団員に渡してあげるなどの作業も発生してしまいます。 また、当日の取り置き分は誰かに受け付け係をやってもらう必要もありますし、枚数が多ければお客さんに数十分近く待ってもらうような状況となることも珍しくありません。

そして何よりも大変なのが指定席の管理作業です。全席自由席であればお金と販売枚数の管理だけで済むかもしれませんが、どの席を誰に販売したか、それをきっちりやらないといけない。 こでが既存の販売サービスでは難しいんです。

チケット係の人は、よくイベント会場の座席表を印刷し、ひとつひとつ塗りつぶして管理するという超アナログ手法で極めて慎重に対応しています。やっぱり知り合いの皆さんにはできるだけ良い席で見て欲しいという希望があることも含め、指定席を間違えるわけにはいきませんからね。

電子チケットだからこそできること

インタビュー画像 その2

それらの問題を一挙に解決できるのが、今回のローンチされるteketというわけですね

はい。teketは本当に私自身が待ち望んでいたサービスなんです。手売りの紙チケットがteketによる電子チケットに置き換わることで、まずチケット自体の手渡しの時間や当日の取り置き・受付対応が不要になります。 そして何よりも指定席の管理がデータ上でできることで、チケット係がアナログの記録管理業務からようやく解放されるようになるんですよ。

とはいえ、長年「手作りの文化」がある種定着している業界で、いきなり電子化はユーザーも戸惑うのではないでしょうか。特に高齢者の方には敷居が高そうなイメージですが。

そんなことはないですよ。クラッシックの世界でも、ぴあさんなど大手のチケット販売サービス利用時はもちろん、海外での公演を見ようとすれば電子チケットでの購入というのは既に当たり前になっています。 そもそも飛行機に乗る時は皆さん普通に電子チケットで購入されているわけですから、体験としての壁自体は高くないんじゃないですかね。

むしろ、手売り・手渡し文化における「団員が自分で購入したチケットを知り合いに渡す」という習慣を、どうシステムに反映させるかについて現在頭を悩ませています。 ひとまずは譲渡機能でカバーするしかないかなと思っていますが。

販売・および、座席管理面以外の部分でteketの強みはありますか

データ化によるメリットは、当然ながら管理コストの解消だけではありません。チケットの販売状況がリアルタイムで把握できるようになることで、 例えば売上進捗が芳しくなければ販促のための対策が立てられるようになります。さらにチケット購入者がデータリスト化されれば、次回公演にお客さんを呼ぶための的確なアクションができるようにもなります。

毎回満員御礼となるような人気団体はともかく、プロモーションやマーケティングの面で各団体がデータを生かせるようになるというのは、集客の改善という点において非常に大きいと思います。 来場者分析や新規客の後追いまできちんとやっているのは、実はプロの団体でも少ないですからね。

あわせて、現段階ではまだ実装されていませんが、SNSとの連携も強化させていきたいと考えています。現状ですとチケットページのURLをFacebookグループやLINEに投げるぐらいしかできませんが、 もっとSNS上で情報が届けやすい仕組みができれば、団体に興味を持ってくれたお客さんや既存のファンの方も、きっともっとハッピーになれるはずです。

チケット管理からの解放

チケット管理者の作業の比較

お話を伺えば伺うほど、現役のアマチュアオーケストラ団員である島村さんの持つ「現場目線」が活かされたサービスになっていると感じます。これらの課題感はいつ頃から持たれていたのでしょうか。

実はteketの開発に取り組むまでは、今まで挙げた問題自体が存在することに気付いていませんでした。電子チケット領域で先行するサービスの存在はもちろん知っていましたが、 自分たちはそもそもターゲットではないという思い込みと、それ以上に、高校の頃から「オーケストラはこういうもの」として特に疑問を持たずにやってきましたから。

teketのサービス自体は、新規で何かサービスを企画しようといくつかのアイデアを検討していった中で、「これは筋が良さそうだ」と気づいてから本格的に取り組んだものなんです。 ただ、やはり他の分野と比べて自分にとって一番深い領域までわかることだから、というのは企画・開発を進めていく上では大きかったですね。

サービスを設計するために、自分が所属する複数団体のチケット係の人にヒアリングをしたのですが、普通はその人たちに辿りつくのって結構大変ですからね(笑)。 コアの部分の課題を、各団体の共通課題としてはっきり認識できたのは、私自身が10の団体に所属していたおかげでもあります。普通は掛け持ちしても2つぐらいですから(笑)

少し話はそれるのですが、話を伺えば伺うほど、「チケット係」の仕事は大変なのでは、と思ってしまいますね・・・・・・

そうなんですよ。だからチケット係は、とにかく団体の中での「いい人」がやることになりがちです。同じ人がずっと担当しているようなケースが多いですね。 しかもいい人だから、大変な仕事にも関わらず強い責任感を持って取り組まれるので、その人なりに何とか改善しようとつい頑張ってしまう。 もちろん団体の中には会場予約係とか練習管理とか、さまざな役割をみんなで分担しているのですが、特に大変な係の1つがチケット係であることは間違いありません。 それこそ自主練もできないぐらいハードな場合もあります。

そういう背景があるからこそ、チケット管理からの解放をまずは実現させたいという思いは強いですね。 チケット係の人たちが、teketのおかげで空いた時間で、ちゃんと自分の練習ができるようにしたいんです。いい人ほど、やっぱり報われてほしいじゃないですか(笑)

teket画面イメージ

それでは最後に、まだスタートしたばかりのteketの今後の展望などを教えてください。

teketは私自身の実体験も踏まえて企画・開発を進めてきてサービスですので、販売側の課題会場にはすぐにでも貢献できると信じています。

また、最初は入り口としての大きさもあってオーケストラでの利用を想定した打ち出しとなっていますが、いずれ劇団などでの利用にも適したサービスにしていきたいですね。 実際オーケストラよりも劇団の方が集客や収益の厳しさがある上、プロとアマが曖昧な世界でもあります。だからニーズは確実にありそうな一方、最適化も必要そうだと感じているので、 少し時間はかかるかもしれません。

あとはとにかく早く、多くのお客さんに「これ便利だね!」と使ってもらえるようになりたいです。慣れてしまえば使いやすく、他のイベントで使って見ようと思えるサービスになれるよう、 適宜アップデートさせながらより良いサービスとなれるよう頑張ります。

teketの特徴

  • ①イベントページ(告知ページ)の作成
  • ②販売状況管理
  • ③指定席にも対応
  • ④席ごとの値段付けや割引、チケットの譲渡に対応
  • ⑤来場者分析
  • ⑥料金

teketは、誰でも簡単に音楽や演劇などのイベントページを審査不要で即日作成できます。ページ作成後、すぐに電子チケットを販売可能です。 とくに特徴的なのは、各会場ごとに指定席・自由席を決めることができ、指定席の席決めもWEB上で簡単に行えること。 また、席ごとの値段付けや割引、チケットの譲渡にも対応しているので、臨機応変な対応が求められる現場でもご使用いただけます。

また、紙のチケットでは難しいリアルタイムでの販売状況の確認や、来場者の分析も行えます。

teketは、無料公演であれば手数料無料です。有料公演の場合は、指定席は10%、その他の券種は8%の販売手数料がかかります。

従来のチケット管理とteketで行うチケット管理の比較

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