ライブ配信で成功しているプロのアーティストに使っているPCや機材、設定方法などを聞いた ビレッジマンズストア
岩原洋平さん
をインタビュー

こんにちは、音楽ライブや演劇などのチケット電子化、座席の管理、来場者分析などができるイベント運営サービス「teket(テケト)」です。

新型コロナウイルスの影響で、ライブやコンサートの開催が難しくなってから数ヶ月。当初はライブやコンサートの開催を見送るアーティストが多かったですが、最近ではライブ配信(オンライン配信)でライブやコンサートを開催するアーティストも増えてきました。

新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに沿ったイベント開催が可能となった今でもライブ配信は増え続けています。teketでもライブ配信のイベント登録は増加しており、「ライブ配信をやってみたい」「お客さんを入れたライブとライブ配信を同時に行いたい」というお問い合わせをいただくことが多くなりました。

この記事を読まれているアーティストの皆さまも、ライブ配信に興味があることと思います。

「ビレッジマンズストア」は、コロナ禍でライブ配信を積極的に行ってきたロックバンドです。早くからteketを活用していただいてるご縁で6月3日にはteket主催でYouTube上での無観客ライブも行いました。

ビレッジマンズストアは、ライブ配信を自分たちが持っている機材で行っています。とはいえ、元からライブ配信をしていたわけではありません。4月1日に初めて無観客ライブを行い、ライブ配信はその時が初めて。そこから試行錯誤を重ねてライブハウスでの無観客ライブや、スタジオでの生配信などを定期的に配信されています。

今回はそんなビレッジマンズストアの岩原洋平さんに使っているPCや機材、設定方法など聞きました。ライブ配信をこれから行いたい方、ライブ配信に挑戦したみたけどつまずいている方、他のアーティストがどのような機材で行っているか気になっている方などなどに参考になると思いますのでぜひ最後までご覧ください。

人物紹介

ビレッジマンズストア

ビレッジマンズストア

焦燥と劣等感をもって焦燥と劣等感をぶち壊す、名古屋が生んだロックバンド。激情的かつ優しさをはらんだ楽曲で展開される華やかド迫力の型破りロックンロールショーは一級品。2018年10月に名古屋DIAMOND HALLワンマンライブ開催、2019年11月のキネマ倶楽部ワンマンライブは完全SOLD OUT。2020年4月、両A面シングル+DVD『アダルト/People Get Lady』リリース。

一番大事にしているのは安定性

本日はありがとうございます。さっそく機材について質問をさせていただきたいのですが、ライブ配信用のパソコンはどのようなものを使用されていますか?

ライブ配信用のパソコンは、グラフィックボードを搭載したデスクトップパソコンを使っています。CPUはIntelのCore i7 8700K、メモリーは16GB、グラフィックボードはNVIDIAのGeForce GTX 1060(メモリ6GB)です。

ライブ配信用のパソコンのポイントを教えてください。

ビレッジマンズストアの配信はお金を頂いている有料配信もあるので、配信が途切れたり、パソコンが固まってしまったりすることは避けないといけません。だからこそ安定性を一番大事にしています。その前提を踏まえたうえでポイントとなるのが、「NVIDIAのグラフィックボード搭載」「NVIDIAの専用ハードウェアエンコーダーNVENCが使える」ことです。

一般的に「パソコンはCPUの性能が大切」と言われていますが、CPUよりグラフィックボードが大事と。

CPUが大切なのは間違いないんですけど、ライブ配信用のパソコンはCPUよりグラフィックボードが搭載されていることのほうが大切です。ライブ配信するには、パソコンに取り込んだ映像を配信するための「エンコード」と呼ばれる処理をするのですが、エンコード作業はCPUだと高性能なものが必要なことにくわえて、ほかの作業ができなくなるほどCPUのパワーを使うんです。

グラフィックボードが搭載されているパソコンだと、エンコード作業をグラフィックボード側で行うことができます。それに、NVIDIAのNVENCだと配信ツールと連携してパソコンの負荷が少なく処理できるのでパソコンが安定するんです。

スペックリスト

なるほど。ライブ配信用パソコンはグラフィックボード搭載が大切な理由が分かりました。ほかにも、岩原さんがライブ配信用のパソコンに必要だと思う要素を教えていただけますか。

NVIDIAのグラフィックボードが搭載されていることと、CPUは第9世代のIntel Core i5以上、メモリーは8GB以上(16GBあると安心)、あと有線LANが接続できることでしょうか。安定した配信を行うためにはWi-Fiではなく有線で接続したほうが良いと思います。

安定性を大事にしたOBS設定

YouTubeやVimeoなどで配信する際に必要となる配信ツールは何を使われていますか?

OBSです。外部からの入れてくる映像と音声のまとめ役としてOBSを使っています。

OBS

OBSとは・・・
OBS(Open Broadcaster Software)は、ライブ配信とビデオ録画を無料でできるソフトウェア。Windows、Mac、Linuxで使用でき、音楽のライブ配信はもちろん、ゲーム実況、YouTuberの生配信、Zoomでのセミナーなど様々な用途で使われています。YouTube、Vimeo、ツイキャス、Twitch、Facebook Liveなどに対応。配信ツールはほかにもありますが、無料で、かつ、シェアが1番高く、OBSで動作確認がとれている映像機器なども多く、安心して使えるツールです。 https://obsproject.com/ja

まとめ役というのをもう少し詳しく説明してもらえますか。

機材構成

僕たちは、映像は映像で仕上げて、音声は音声で仕上げて、それをライブ配信用のパソコンに繋いでOBSに入力しているんですね。そういう意味でのまとめ役です。

OBSはYouTubeとかVimeoに配信できるだけではなくて、映像や音声を詳細に設定できる機能などもあります。例えば、演奏中の曲名をアイキャッチみたいに入れ込んだり、カメラの映像とほかの映像を重ねたり、映像の色味などをいじったり。無料なのになんでもできる凄いツールなんです。ただ、僕たちはOBSの機能を使うのは最低限にしています。

それはなぜなんでしょうか?

パソコンになるべく負担をかけないための工夫です。先ほども話をしたように、安定性を大事にしているのでパソコンになるべく負担をかけたくないんです。最新のパソコンを使っているわけでもないですしね。映像と音声を完璧に仕上げた状態でパソコンに繋いでいるのも、パソコンの負担を減らす工夫のひとつでもあります。

演奏は完璧なのにパソコンの調子が悪くなって配信が止まってしまったら元も子もないですしね。機能はたくさん使いこなしたいところですが、トラブルなく配信できるために安定性を重視するのは大切ですね。

OBSの設定でとくにここは気をつけているという箇所などはありますか。

OBS
OBS

「設定」にある「出力」のエンコーダをNVIDIA NVENC h.264(new)にしています。これで、先ほどから話をしているグラフィックボードを使ったハードウェアエンコード処理(エンコード作業)ができるようにます。

あと、レート制御に関しては、可変ビットレートと固定ビットレートがありますが固定ビットレートのほうがいいと思います。ライブ映像みたいに動きやカットが多い映像だと、可変ビットレートだとじゃみじゃみっとしたゴーストみたいなのが出ちゃったので。

また、ビットレートの値は6,000kbpsにしています。ただこれは、ネット回線の環境によるので、自分たちで探ってみてください。ビットレートを上げたら上げただけ映像は良くなりますが、マシンパワーとネット回線の負担は上がるのでバランスを探るのが大事です。

ビットレートを9,000 Kbpsとかにすると映像はより綺麗になりますけど、上りの速度が安定していないとカクついたり、最悪配信が止まってしまいますもんね。ライブ配信をする環境で一度、ネット回線の上りの速度(アップロード速度)を確認するのがいいかもしれませんね。

インターネット速度

回線速度はGoogleなどで「ネット回線 スピード」などで検索するとすぐに速度を測れます

そうですね。僕らが6,000 Kbpsにしているのは、安定性のためです。経験上6,000 Kbpsあれば見るに耐える映像だし、安定もしているので、ビットレートなどがよく分からなければ一度6,000 Kbpsで試してみるのはいいんじゃないかと思います。

ライブ配信でのカメラワークはクオリティをあげるポイント

映像は映像で仕上げて、音声は音声で仕上げているという話でしたが、どうやってライブ配信用のパソコンに繋いでいるのでしょうか。映像のほうから教えてもらえますか。

Blackmagic Designの「ATEM Mini」というスイッチャーを使ってカメラで撮った映像をパソコンに取り込んでいます。ATEM MiniはHDMI経由で最大4つのカメラを接続できるんですけど、カメラを切り替えたりするのも簡単にできるんです。

スイッチャー

ATEM Miniと接続するカメラについては、僕の私物を使う場合はSonyの「α6400」というミラーレス一眼カメラを使っています。

映りはどうでしょうか?

問題ないと思います。カメラについては、HDMI出力がついているミラーレス一眼カメラなどをお持ちであればそれを使うのがいいと思います。

カメラはクオリティを追求しだすとテレビとかで使われるビデオカメラとかにいきついちゃうますし、上を見たらきりがないですしね。無観客ライブのときは複数台のカメラで撮影されていたと思うのですが、そのときはどのようにされていたのでしょうか?

問題ないと思います。カメラについては、HDMI出力がついているミラーレス一眼カメラなどをお持ちであればそれを使うのがいいと思います。

無観客ライブの配信は、カメラマンさんを呼んでいます。このライブの時は、4人のカメラマンさんを呼んでカメラ4台体制で撮影をしました。

カメラマンさんは外注で頼んでいるんですか。

そうです。ライブの時は僕らだけで撮影もできないですし、カメラマンさんにも無観客ライブの撮影や生配信に慣れてもらい、という気持ちもあるのでやる気のある方に外注しています。

なるほど。カメラマンに外注するうえで気をつけていることなどはありますか。

そもそもライブ配信でのカメラワークや照明は、演奏と同じくらい重要だと思っています。普通のライブではあまり気にしないところですが、配信の観点からみるとライブのクオリティを上げるポイントでもあるので、カメラマンさんとの話し合いはかなりしていますね。

例えば、バンドメンバー全員が映っているヒキの絵がずっと続いちゃうと飽きちゃいますし、カメラがグワングワン動きすぎても気持ち悪くなっちゃいますよね。たまには楽器のドアップだったり、横顔のドアップだったりとか、そういうちょっと凝ったアングルを差し込んだほうがいい。そういったことを話し合ったり、ライブを見てくれた方たちのフィードバックを共有しています。こういった形でのライブ配信ははじまったばかりですし、まだ完璧に分かっている人はいないので、一緒にやっていくという姿勢ですね。

DTMで音を仕上げる

音声側の接続についても教えてもらえますでしょうか。

音声に関しては、タスカムのオーディオインターフェース「US-16x08」にギターやベースを繋いで、ドラムに関しては本当は8本のマイクが欲しいところなんですけど4本にぎゅぎゅっと節約して音を入れています。

機材構成

US-16x08はライブ配信用とは別のパソコンを用意して接続をして、パソコン上で調整して音を作り上げていってます。いわゆる、「DTM(デスクトップミュージック)」と言われるパソコンの中で音楽をつくる仕組みです。

仕上げた音をSTEINBERGのオーディオインターフェース「UR22」を経由してライブ配信用のパソコンに入れています。UR22に関しては、必ずしも必要ではありません。というのも、ATEM Miniにマイク入力があるので、そちらを経由すれば問題はないので。ただ、ATEM Miniはキャノンケーブル対応ではないので、安定性を考慮してオーディオインターフェースをかましています。

音に関してはとくにこだわられている印象を受けたのですが、これは一般的なやり方なのでしょうか?

一般的ではないと思います。ライブハウスでのライブであれば一般的なのは、ライブハウスのPA、ミキサーで音を作ってそれを取り込むパターンですかね。僕の場合は、自分が作った音をお客さんに直接届けたいという思いが強いので今説明した方法をとっています。

なるほど。

あと、PAとパソコンの差として、パソコンのほうがよりライブっぽい音を届けられるというのはあります。というのも、パソコンを使ってやると、例えばリハーサルの音を録音しておいて、そこから自分たちの好きなように調整できるので、空気感みたいなものが自在に作れるんです。PA側ももちろんできるのですが、PAさんにもよるところもあるので。自分たちでこういう音を出したい、というのが決まっているのであればDTMはおすすめです。

DTMをまったくご存じない方が同じような環境を構築するのは難しいと思うので、ライブハウスでのライブであればPAさんに協力してもらうのがいいと思いますし、個人ではじめる場合はちゃんとしたマイクがついていて、映像も綺麗にとれるカメラを買ってみるのがいいかもしれないですね。例えば、Zoomの「Q2n 4K」はハイレゾ音質で4Kも撮影できます。こういうカメラでチャレンジしてみるのはありだと思います。

100点じゃなくてもいいからやってみることが大切

岩原洋平さん

機材から設定方法まで色々と教えてくれてありがとうございました。最後にライブ配信をやってみたいと思っている方に伝えたいことはありますか。

今こうやって話をさせてもらっていますけど、僕たちもまだまだ手探り状態です。もともと、ツアーをまわっている最中にお客さんを入れたライブができなくなってしまって、何かしら出来る方法を考えて今の形に辿り着きました。

初めて無観客ライブ(YouTubeでの生配信ライブ)をやったときの準備期間は2週間くらいです。たまたまカメラとか機材が好きなこともあって配信できる環境があったので、パッと行動に移せました。

とはいえ、OBSやYouTubeの設定などで失敗したりもしています。ただ、試行錯誤しながら形をつくっていくのは楽しかったですし、お客さんからも「やってくれてありがとう」「止まらないでくれてありがとう」という感想もいただいて、ベタな答えになっちゃいますけどやって良かったと。やる気ももらったし、こういうふうに音楽活動をしていていいんだな、と認めてもらえたような気がすごくしたんです。

だからこそ、ライブ配信に興味があるのであれば「失敗してもいいからやってみることが大事」だと思います。失敗してもいいじゃない、100点じゃなくてもいいからやってみようよと。

そうですよね。ここまで読んでくださっていれば興味をお持ちだと思うので、ぜひライブ配信にチャレンジして欲しいですね。

今は苦しい状態ではありますが、配信という選択肢が選べるようになったので、わからないで終わってほしくないというのが僕の気持ちです。アンパンマンも言っていると思うんですけど、「わからないまま終わるそんなのは嫌だ」という精神でやっていきましょう。

【ビレッジマンズストア 岩原洋平さん × teket】音楽アーティストのためのライブ配信方法 勉強会

岩原さんをゲストにお迎えして、ライブ配信方法に関する勉強会を開催しました。インタビューでは触れられていないディープな話もあるので、ぜひご覧ください!

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