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プログラム
── 昭和100年 × 戦後80年 ──
「あのころからもう百年もたってしまったようだ。…戦争の煙幕に隔てられてあるかなきかに霞んでいる。"個人の邸宅では東洋一"などと言われた駒場の邸に、私は本当に住んでいたのだろうか」
侯爵家長女・酒井美意子『昭和マイラヴ』(清流出版)
♢♢♢
<口絵紹介>
◆写真④=江戸時代、原野が広がり、幕府の御鷹場だった「駒場野」『江戸名所図会 3巻』天保5-7年(1834-36)
◆写真⑤=駒場邸に移る前の旧本郷邸(東京帝国大学本郷構内)『東京府史蹟名勝天然記念物調査報告』(1940)
◆写真⑥=蓄音器を愛好し、戦後L Pレコード愛好会の会長も務めた侯爵嗣子・前田利建(1934)『趣味大観』より
◆写真⑦⑧=「米英レコードをたゝき出さう」「敵性一掃!米英レコードを供出致しませう」『写真週報』(1943)
◆写真⑨=侯爵最期のボルネオの海
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<侯爵邸(駒場邸)関連 略年譜>
侯爵 前田利爲[陸軍大将](1885-1942)
大正15年(1926) 侯爵令嬢誕生・昭和改元
昭和 4年(1929) 洋館竣工・翌年侯爵歸國
昭和 6年(1931) 満洲事變
昭和 8年(1933) 國際聯盟 脱退
昭和11年(1936) 二・二六事件
昭和12年(1937) 日中戦争 勃發
昭和14年(1939) 第二次世界大戰 勃發
昭和16年(1941) 太平洋戦争 開戰
昭和17年(1942) 侯爵 前田利爲 戰歿
昭和20年(1945) 東京大空襲 本郷邸燒失
駒場邸 聯合軍接収
昭和31年(1956) 「もはや戦後ではない」
昭和32年(1957) 接収解除
昭和42年(1967) 駒場公園 開園
近代文学博物館 開館
昭和57年(1982) 『ある華族の昭和史』刊
令和 7年(2025) 昭和100年・戦後80年
▼ NHKアーカイブス(映像)
昭和58年(1983) 土曜ドラマ『華族の女』
原作=酒井美意子『ある華族の昭和史』
https://www2.nhk.or.jp/archives/movies/?id=D0009044419_00000
♤♤♤
♫ 蝕まれた記憶を呼び醒ます
「文豪とアルケミスト(錬金術師)」
♫ 心踊る蓄音器、花開くダンスホール
「ラ・クンパルシータ」(c.1917)
♫ 園遊会(ガーデンパーティ)の想い出
「想いのとどく日」(1935) ほか
<プロローグ>
「大日本帝國」の時代──
帝都を焦土と化した關東大震災後、東京帝國大學の復興計画とともに昭和のはじめ本鄕から駒場の地へ生まれ落ちた英國チューダー樣式の瀟洒な洋館(1929-)
榮華を誇った暮らしぶりを傳える1冊の本──元侯爵家令嬢の囘想錄『ある華族の昭和史』。100人以上の使用人を抱え、かつて東洋一と謳われた館が辿った數奇な運命とは!
カフヱーやダンスホールが花開いたモダン日本で一世を風靡し、錚々たる文豪文士をも魅了した異國ロマン溢れるタンゴの響きにのせて、激動の時代の息遣いが聞こえてくる……
※演奏(約40分)の前後に、国の重要文化財に指定されている洋館・和館の見学をご堪能ください。
※2022/2023に続く再開催イベントです。一部を除き、内容は重複します。
※13:30/14:30で曲目が一部異なります。
出演者
ピアソラも愛した銘器──
1930年代ドイツ製バンドネオン「AA」(ドブレアー)をはじめ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピアノなど10名強の編成でお贈りします。
みどころ
加賀百万石の侯爵家──
昭和初期、野趣あふれる駒場の地に、イギリス貴族のカントリーハウスと見紛うロマンティックな洋館が威容を誇り、内部は王朝風バロック的室内装飾が施され、古今東西の一級の美術品や豪華絢爛な調度品が並んでいました。
「この家には使わない部屋やあかずの扉があり不気味だった。古い歴史をもつ大名の家には怖い伝説も多く、ブロンズの彫像や額の絵が動き出しそうで雨の夜などおののいていたものだ」
侯爵家長女・酒井美意子『昭和マイラヴ』
戦前・戦中、国内外の賓客が出入りし、昭和史の舞台となる一方、戦後は近代文学博物館(1967-2002)に生まれ変わった洋館。文学の薫り高いサロンで、数奇な運命を辿った館の呼び声に耳を澄ましてはいかがでしょうか?
♧♧♧
大衆文化が花開いた戦間期、人々の娯楽の一つが蓄音器でした。世界一流の音楽家があなたの家のお茶の間へ──そんな触れ込みとともに一般家庭にも広まり、人気を博しました。
当時はまだ、片面ごとに1曲しか再生できないSPレコードの時代。針を替え、ゼンマイを巻き、盤面を擦り減らし、ようやく流れる音色に束の間ながら酔いしれました。侯爵嗣子もまたレコード蒐集と蓄音器の研究に耽溺し、特製の電気蓄音機を愛用していました【写真⑥】。
大戦下、敵対する米英のジャズなどが〈敵性音楽〉として排斥されるなか【写真⑦⑧】、渇いた人心を潤した一つがタンゴでした。後に凄絶な従軍体験をもとに戦争文学を記した大岡昇平(『俘虜記』『野火』『レイテ戦記』ほか)らも、召集前、タンゴの名演名唄をレコードで楽しんでいました。
蟲喰まれた本を紐解きつつ、時代を彩ったタンゴの名曲にのせて、洋館の見つめた約100年の歴史に想いを馳せます。催しの前後に、侯爵令嬢の居室をはじめ、華族の暮らしを偲ばせる館内巡りもご随意にお愉しみいただけます。
〜〈敵性音樂〉とタンゴ 〜
◆「第二次大戦末期のことですが、アメリカ軍の空襲があると…レコード…を抱えて防空壕に逃込んだ。…蓄音機を毛布で包んでタンゴを聞いたものです」
(『アルゼンチン日本人移民史』)
◆「『夜のタンゴ』[コンチネンタルタンゴ]は青春のはけ口でもあった。…盟友国ドイツの歌をドイツ語でうたっている分には別にお咎めはなかった」
(永田文夫「スクリーンを彩ったタンゴ映画から」)
◆「カルロス・ガルデルが『毀れたバンドネオン』と『象牙のマスコット』をギター伴奏で唄っている。この人のいつもの持味が出ている」
(大岡昇平『ディスク』1941年6月号)
▼金沢蓄音器館の聴き比べ
〜前田家の殿様が聴いた音〜
https://youtu.be/ZeFqifCotis?feature=shared
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~文学とタンゴの出逢い(抜粋)~
【與謝野晶子】『瑠璃光』
うすものはタンゴを踊る細腰(さいよう)に薔薇は眞白きたなぞこに見ん
【宮沢賢治】『春と修羅 第二集』
夜ぞらにふるふビオロンと銅鑼(中略)高田正夫はその一党と、紙の服着てタンゴを踊る
【中島敦】『踊り子の歌』
亞爾然丁(あるぜんちん)のタンゴなるらしキャヷレエの窓より洩るるこの小夜更(さよふ)けに
【萩原朔太郎】『草稿詩篇 斷片』
TANGO おどれ、広間の壁は眞鍮張りだ、みつめる酒場の床に砒素の粉末を光らす(中略)精霊電氣の淺草だ
【宇野千代】『あひびき』
「昼間からダンスかい?」「(中略)アルゼンチン・タンゴをそのまま持って来てる先生がいるんだよ。どうだい、美しいお嬢さんばかりだろう?」
【織田作之助】『それでも私は行く』
先斗町の芸者でダンスを知らない者はない。(中略)曲はタンゴ「クンパルシータ」
【芥川龍之介】『芥川龍之介の囘想』(小穴隆一)
ヴァレンチノの「熱砂の舞」を見た。芥川は「かうやつて死んだ者がまだ動いてゐるのをみてると妙な氣がするねえ」
【堀辰雄】『天使にからかふ』
私は、その憑かれたやうなタンゴの踊り子達に、はげしい拍手を浴びせたいのを、一生懸命に我慢してゐた
【菊池寛】『結婚二重奏』
「これがタンゴの踊り方よ。ねえ、ねえ、これからときどきダンスに行つてもいい。あなた、一緒にいらつしやらない?」
【谷崎潤一郎】『友田と松永の話』
「君は我が輩のタンゴを見たか?」(中略)男は女のかぼそい胴を、背中へ手をかけてしつかりと抱く
【堀口大學】『季節と詩心』
パンパスを見た人でないとタンゴの曲の中からにじみ出してくる(中略)身にしむ節のまことの味は解りません
【川端康成】『淺草紅團』
アクロバチック・タンゴ(中略)踊子達は舞台の袖で、乳房を出して衣裳替えする程、あわただしい暗転だ
【三島由紀夫】『鍵のかかる部屋』
學生時代のをわりに(中略)一週間で、フォックストロットとタンゴを習つた。そこで町の踊り場へ出かけて行つた
【永井荷風】『踊子』
タンゴそのままに半身をぐつと反らせて(中略)兩手の指と指とは時計の齒車のやうに深く組み合はされて離れません
【夢野久作】『少女地獄』
私はダンスは新米ではあるが自信は相当ある。ジャズ、タンゴ、(中略)何でも御座れの横浜仕込みだ
【岡本かの子】『ドーヴィル物語』
女は馴染みのタンゴ楽手のアルゼンチン人や友達の遊び女達の出入する度に挨拶の代りに舌を出したりした
【林芙美子】『シベリヤの三等列車』
タンゴなぞは禁止されているといっても走っている汽車の中です。(中略)皆の顔が生き生きして来ます
【島崎藤村】『巡礼』
世界に名高いタンゴの踊り場なぞも(中略)一般に夜深しすることを楽しむという風だ
【横光利一】『旅愁』
カフェー・トウリオンフは凱旋門から下って来た左手にある(中略)楽士たちのタンゴが始まり出した
【坪内逍遥】『ある富豪の夢』
伊太利相撲も、タンゴ踊りも、もうお珍しくはないでせう?
【大岡昇平】『disques』
ガルデルが「毀れたバンドネオン」(中略)をギター伴奏で唄っている。この人のいつもの持味が出ている
【埴谷雄高】『古い映画手帖』
ヴァレンチノが『黙示録の四騎士』に登場してきたとき(中略)アルゼンチン・タンゴを流行させ(中略)激しい波はわが国をもまた襲ってきた
【渡辺温】『シルクハット』
独逸麦酒をしこたま飲んだあとで、アルゼンチンタンゴを怪しげな身振りで踊っていた
【徳田秋聲】『和解』
ドクトルは(中略)ダンスの研究にも熱心で(中略)屡々豊富なタンゴの新しいステツプを踏んで見せてゐた
【室生犀星】『海谷たつ子』
マンペイ・ホテルでダンスの禁止にならない前、一緒にタンゴか何かを踊ったことがあった
【北原白秋】『眞珠抄』
冷たきものは蛇の舌、タンゴ踊の眼の光 執念の白蛇死んだ女王の陰(ほと)に入る、といの
【森鷗外】『水のあなたより』
"Tango" パリイのアカデミイで(中略)タンゴの辯護演説
【高橋新吉】『ダダイスト新吉の詩』
それからめしやへ行つた。/黙示錄の四騎士のタンゴ踊りが好かつた丈だ。/彼等は魚賈になるが好い。
【坂口安吾】『金錢無情』
入りみだれて、大陽気、ダンスホールと変じ、倉田博文の浪花節によつてタンゴを踊つてゐる
【石川達三】『最近南米往来記』
タンゴ踊れば音につまされて/人のかいなで涙ふく/返事待とうか口切り出そうか/くれたマテ茶の湯がヌルい
【井上靖】『三ノ宮炎上』
チャナは本名田越トシエというのだが、チャイナタンゴがうまいので、チャナ、チャナと呼ばれていた
【吉川英治】『あるぷす大将』
きのう汽車ん中で見た新聞によると、ジャズはもう下火で、流行はタンゴだそうだ
【大佛次郎】『夜の眞珠』
タンゴの優雅な曲について、レナの背中がしなやかに形のいい姿勢を床に描いた
【遠藤周作】『アデンまで』
だれかがレコードをふたたび、かけた。しらけた一同の気持をゆさぶろうとした。タンゴである。「おどりましょうよ」
【安岡章太郎】『ああいえばこういう』
喫茶店というと、私は昭和十年代の神田の裏通りを憶い出す。(中略)タンゴでは『ラ・クンパルシータ』
【澁澤龍彦】『狐のだんぶくろ』
私は「ラ・クンパルシータ」や「奥様お手をどうぞ」でタンゴのステップをおぼえたのである
【大江健三郎】『個人的な体験』
火見子は他の局のボタンを押す、そこではポピュラー音楽をやっている。タンゴだ(中略)鳥(バード)たちは時間にめぐりあうことができない
【中上健次】『千年の愉楽』
蓄音機でタンゴを聴いていると(中略)むずむずと血がさわぎ(中略)路地の風景がブェノスアイレスの町並みのよう
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